StampRoad

ホーム > インタビュー > 【interview】スタンプロードで沖縄の「観光立県」実現を /有限会社屋富祖工業

【interview】スタンプロードで沖縄の「観光立県」実現を /有限会社屋富祖工業

インタビューの様子
インタビュー日時 2021年12月11日土曜日
インタビューをさせていただいた方:有限会社屋富祖工業(沖縄県沖縄市) 代表取締役 屋富祖功(やふそ・いさお)様
インタビュアー:経営コンサルタント 前田健二

沖縄県沖縄市は、人口14万3千人を有する沖縄県第二の街です。県庁所在地の那覇市から車で北へ一時間程走ったところにある沖縄市は、有名な沖縄の伝統芸能であるエイサーの街として知られています。新型コロナウィルスの感染拡大により、残念ながら今年は中止になってしまいましたが、毎年旧盆を迎えると市内各地で太鼓、三線(サンシン)、バーランクーを鳴らしながら街を練り歩くエイサーの隊列を目にすることができます。

沖縄市はまた、「音楽のまち」としても知られています。中心市街地であるコザ地区には、「レミーズ」「フジヤマ」「セブンスヘブン」などの由緒あるライブハウスが軒をつらね、沖縄県内外のアーチストが連日熱演を繰り広げています。また、1983年からスタートした「ピースフルラブ・ロックフェスティバル」をはじめ、多彩な音楽イベントが一年を通じて市内各地で開催されています。

そんな沖縄市内にある有限会社屋富祖工業さんの本社を訪ね、代表取締役の屋富祖功様に、スタンプロードを導入されたきっかけなどについてお話をうかがってきました。

沖縄市という街について

(インタビュアー前田健二、以下「前田」)本日はよろしくお願いいたします。はじめに、御社がある沖縄市について教えて下さい。沖縄市とは、どんな町でしょうか。

(有限会社屋富祖工業 代表取締役の屋富祖功様、以下「屋富祖社長」)沖縄市は、沖縄県では那覇市に次いで二番目に人口が多い街です。人口は、那覇市が約30万人で、沖縄市は約14万人です。なお、沖縄県の人口は約150万人です。

前田:なるほど。

インタビューの様子

屋富祖社長:沖縄市はまた、平成20年に「こどものまち宣言」を掲げた街でもあります。これは、沖縄市が出生率で全国一位になったことを受けて出されたもので、こどもたちが夢に向かって元気にたくましく育つ環境づくりを目的としています。

前田:沖縄は、県全体の出生率も2018年時点で1.89と、全国平均の1.42を大きく上回っていますよね。

屋富祖社長:そうですね。あと、沖縄市と言えばはずせないのが在日米軍基地です。沖縄市は、在日米軍基地の文字通りの門前町です。沖縄市の中心部に在日米軍の基地や施設が存在しています。かつては、週末になると米軍の兵士が沖縄市内の繁華街に出てきて、街が大いに賑わっていました。しかし、事件などの不祥事の影響もあり、今はかつての賑わいはなくなってしまっています。まあ、それでも最近は少しずつ戻して来ているようですが。

前田:基地に反対している人が騒いだりするのでしょうか。

屋富祖社長:そういうこともあるかも知れないですね。ただ、基地の前で座り込んでいる人の多くは高齢の地元住民です。若い人で座り込みをやっている人はまずいません。

前田:なるほど。沖縄市民にとっては在日米軍基地が、色々な意味で大きな存在になっているのですね。

屋富祖社長:在日米軍基地については、地元住民でも意見が分かれています。住民どころか、家庭内でも意見が分かれています。例えば、旦那さんが建設業で働いていて、奥さんが専業主婦であるといった場合、旦那さんは肯定的な意見で、奥さんは否定的な意見だったりします。同じ屋根の下で暮らしていても、選挙の時は反対派と否定派に分かれたりします。

前田:沖縄市民にとっては、在日米軍という存在が、良くも悪くも生活に密着している。

屋富祖社長:そうです。特に昨今のように世界情勢が緊迫化してくると、とりわけそうなります。沖縄には在日米軍基地があるので、有事の際には敵の最初の攻撃目標になります。子育て中のお母さんたちにとっては、非常に切実な問題です。

前田:ちなみに私は東京に住んでいるのですが、東京には、ゼロではないですが沖縄ほどの軍事的プレゼンスがありません。沖縄が置かれている状況は、そうした生ぬるい状況とは全く違うのですね。

屋富祖社長:軍事的プレゼンスという点においては、沖縄だけが過度な負担を強いられています。内地の方々には、ぜひこの気持ちを分かち合っていただければと思います。戦後76年間ずっと基地が存在している。沖縄以外に分散するなどして、負担を軽減してほしいです。

前田:切実な問題ですね。国全体で考えなければならないですね。

屋富祖社長:あと、沖縄市は「音楽のまち」としても有名です。街をあげて「音楽のまち」で盛り上げようとしています。さらに、沖縄市は「チャンプルー文化」も有名です。

前田:「チャンプルー文化」ですか。

屋富祖社長:チャンプルーとは、沖縄の方言で「混ぜ合わせる」という意味です。沖縄は昔から中国や東南アジア諸国との交易が盛んで、人的な交流も盛んに行われてきました。特に沖縄市内には東南アジア出身の外国人が多く住んでいます。そうした色々な出自を持つ人々が「混ぜ合わさって」チャンプルー文化を構成しています。

有限会社屋富祖工業について

前田:次に、御社のプロフィールを教えて下さい。

屋富祖社長:私は、地元の工業高校を卒業し、友人の紹介で19歳の時に東京の土間屋に就職しました。当時はまったくの素人で、土間屋がどんな仕事をするのか皆目見当がつきませんでした。仕事はコンクリート打設と仕上げで、東京をはじめとする関東一円の現場で働いていました。冬の仕事はとてもつらく、コンクリートが乾かないので、仕上げが翌日になってしまうこともありました。

代表取締役 屋富祖功様

前田:大変な仕事ですね。それはいつくらいのお話ですか?

屋富祖社長:私は今53歳ですので、もう30年以上前の話です。バブルが弾けた直後くらいですね。

前田:それで、そのお仕事はどのくらいやられたのですか?

屋富祖社長:3年半です。当時沖縄出身の彼女と同棲していたのですが、彼女が妊娠していることが判明しました。彼女が里帰り出産を希望したので、沖縄へ返しました。ほどなくして自分自身も沖縄の土間屋へ転職しました。

インタビューの様子

前田:なるほど。東京の土間屋さんから沖縄の土間屋さんに転職されたのですね。その後はどうなりましたか?

屋富祖社長:その後は個人で土間の仕事を請け負うようになりました。やがて平成18年に会社法改正があり、有限会社屋富祖工業に改組しました。

前田:仕事を始められてから今日まで、ずっと土間の仕事一筋でやられてきたのですか。

屋富祖社長:今では土間の仕事に加えて、壁の左官と、スタンプコンクリートの仕事もやっています。スタンプコンクリートの仕事は12-3年前からやっています。スタンプコンクリートの仕事はインターネットで見つけて、名古屋へ講習を受けに行って始めました。

前田:スタンプコンクリートの仕事は、具体的にどのような仕事でしたか?

屋富祖社長:始めてから売上が安定するまで5年程かかりましたが、当初は民間のアパートのアプローチとかでした。仕事は地元の土間屋に営業して取ってきました。作業車にスタンプコンクリートの広告を印刷して、宣伝したりもしました。

型押しアスファルト工法の普及程度

前田:ところで、いわゆる型押しアスファルト工法についてですが、こちら沖縄ではどのくらい普及しているのでしょうか。

屋富祖社長:実は私自身、10年程前に万座ビーチのホテルの型押しアスファルト工法の現場を手伝ったことがあります。九州に本社がある、御社のライバル企業さんの仕事でした。とても面白いと思い、その会社にヒーターがいくらするのか聞いてみました。すると、2千万円という話でしたので、とてもうちではできないと思い、断念しました。いずれにせよ、沖縄で型押しアスファルト工法がどの程度普及しているかについては、よくわかりません。

スタンプロードについて

前田:次にスタンプロードについておたずねします。屋富祖社長がスタンプロードをお知りになったきっかけを教えて下さい。

屋富祖社長:三豊工業さんからスタンプロードのご提案をいただいたのがきっかけです。元々当社は、沖縄のスタンプコンクリートの世界ではそれなりに名が知られています。三豊工業さんの方からスタンプコンクリートの仕事に加えてアスファルトに型押しする「スタンプロード」の仕事もやりませんかという話をしていただいたのです。

インタビューの様子

前田:なるほど、それに対して屋富祖社長はどう反応されましたか?

屋富祖社長:いただいたご提案には、スタンプロードの仕事を始める際にかかるコストについての情報も載っていました。それらも含めて、当社がやるべきかどうか社内で検討を重ねました。丁度折よくものづくり補助金を活用できないかという話も舞い込んできて、それも含めてやるべきか検討しました。

施工の様子

前田:それで結局どうなったのですか?

屋富祖社長:結局、ものづくり補助金を申請する方向で話が固まりました。申請し、無事に採択となり、晴れてスタンプロードの仕事を始めることになりました。しかし、私的には、たとえものづくり補助金で採択されなくても、自己資金を投じてでもやろうと思っていました。

スタンプロードの利用用途

前田:それで、晴れてスタンプロードの認定施工店になっていただいたわけですが、スタンプロードを導入されたら、実際にどのような現場でのご利用をお考えですか?

屋富祖社長:沖縄県は「観光立県」を標榜する、文字通り観光産業が主力産業の土地です。ところが、那覇空港から移動されてご覧になったと思いますが、空港から各地の観光スポットへ移動するまでに眺める風景は、草だらけの茫々としたものです。沖縄県はビーチやリゾート施設はきれいですが、街中は整備されておらず、お世辞にもきれいとは言えません。これでは観光立県などとはとても言えません。街の景観をよくすることにスタンプロードを使いたいと考えています。

前田:となると、公共の仕事が中心になりそうですか?

屋富祖社長:公共と民間と、どちらもあると思います。民間の仕事は、現在の当社のスタンプコンクリートの営業チャネルから取ってきたいと思います。スタンプコンクリートの営業チャネルで、スタンプコンクリートとスタンプロードの両方提案できるのは当社の強み だと思います。

施工の様子

前田:御社の現在のお仕事は4割スタンプコンクリート、3割壁左官、3割土間という風にお聞きしました。スタンプロードは、御社にとって第4の事業になるわけですが、スタンプロードのお仕事を、いつまでにどのくらいの規模にしたいとお考えですか?

屋富祖社長:すでにスタンプロードをやりたいという商談が発生しています。まずは来年から正式に事業としてスタートさせ、来年2022年度一年間で1500万円くらいはやりたいと思っています。2年目以降は1年目の実績を見て考えたいと思いますが、新たな雇用を生むくらいの規模にはしたいと思っています。

前田:となると、どのようなチーム体制を組んでゆくのかはまだ決まっていない?

屋富祖社長:今回スタンプロードの仕事を始めるに際し、全社員15名を集めてミーティングをしました。また、ワークショップにも若手メンバーを中心に7名の社員を参加させました。ワークショップに参加する前は、スタンプロードの仕事は難しいだろうという先入観を持つ社員が多かったです。でも、実際に参加してみると、「以外にできましたよ」という反応が返ってきました。そういう意味では若手を送って正解でした。スタンプロードのチームは、そうした若手中心になると思います。

前田:若手の方は、すでにスタンプコンクリートの仕事で実績と経験があるからでしょうかね。年配の方はなかなか手を出したがらない。

屋富祖社長:スタンプロードには年配の方でもできる仕事があります。例えば養生とかです。当社には若手スタッフに加えて74歳になる年配の社員もいます。コンクリートの打設などでは体力的に難しいですが、スタンプロードの仕事を割り振ろうとも考えています。

施工の様子

スタンプロードの営業方法

前田:話は変わりますが、今後スタンプロードの事業を展開するにあたり、どのような営業方法をお考えですか?

屋富祖社長:今回のワークショップには当社の社員に加え、地元の設計コンサルさんや元請けさんなど、スタンプロードに関心を持ってくれそうな方にもお声がけし、参加していただきました。結果、反応はとてもよかったです。そのようなやり方でスタンプロードを宣伝し、実際に使っていただくよう働きかけようと考えています。

前田:建設コンサルさんや元請けさんといったキープレーヤーにスタンプロードをアピール、提案してゆくわけですね。

屋富祖社長:当社の営業の主力は職長で、彼が現場で実際に商談をしています。また、社内にはSNSが得意な若手の女性社員がいて、SNSやホームページを使って情報発信をしています。そのおかげで、最近はSNSやホームページから仕事が来るようにもなりました。スタンプロードについても同様に、SNSやホームページを使って情報発信してゆきます。

テンプレート、色、ヒーターについて

前田:話を変えますが、スタンプロードのテンプレートについてはいかがですか?

屋富祖社長:今回のワークショップで4種類のテンプレートを拝見しました。全部で10種類以上あるそうですが、バリエーションとしては十分だと思います。個人的には既存のテンプレートに加えて、例えば沖縄市のマスコットやロゴなどのオリジナルテンプレートが作れるといいと思います。オリジナルテンプレートが作れると、スタンプロードの営業的にも有利になると思います。

従業員の皆様

前田:なるほど。

屋富祖社長:沖縄には知花花織(チバナハナオリ)という伝統的な織物があります。沖縄オリジナルと呼ぶべきデザインが特徴です。例えば知花花織のデザインのオリジナルテンプレートを作り、アスファルトの上に表現することができれば大変面白いと思います。知花花織の伝統も伝えることが出来るので、行政にも提案できます。

前田:なるほど。それは面白いアイデアですね。お話をうかがっていると、屋富祖社長は、沖縄の景観を良くしたい、沖縄各地の伝統を表現したいという思いをたくさんお持ちなのがわかります。ところで、スタンプロードの色についてはいかがですか?

屋富祖社長:色については、私がどう思うかというよりも、お客さんがどう思うかが大事だと思います。いくら自分がいいと感じていても、お客さんが納得しなければそれまでです。

前田:色がいいか悪いかを決めるのは、あくまでもお客さんだということですね。お客さんがいいと言えばいいし、悪いと言えば悪い。

屋富祖社長:一度施行してしまうと、通常はやり直しができません。そういう意味では、お客さんと一緒に色などを確認できるシミュレーションソフトがあるといいと思います。

前田:ヒーターについてはいかがですか?

屋富祖社長:今回のワークショップ開催に際し、ガスボンベが用意できないなどのトラブルはありましたが、小型のガスボンベで何とか対応しました。なお、ワークショップに参加した社員からのヒーターについてのフィードバックはまだ確認していません。

三豊工業に望むことなど

前田:最後に、三豊工業に望むことなどございましたらお願いします。

屋富祖社長:沖縄は本土から遠く、輸送コストもかかるので、材料やテンプレートなどについては、可能な限り受注発注ベースで受けていただけると助かります。あと、機械の故障などに対するサポートも期待しています。

左から弊社代表佐藤、屋富祖社長、弊社岡山営業所長南

前田:可能な限り在庫を持たずに済んで、トラブル時のサポートもしっかりと対応してほしいということですね。

屋富祖社長:先ほど申しましたオリジナルのテンプレート作成は、ぜひ実現させて欲しいですね。あと、当社はこれまでに行政に対する直接営業と言うものをやったことがありませんので、その辺のノウハウを教えていただけますとありがたいです。いずれにせよ、沖縄県の観光立県実現に向けて、スタンプロードが貢献できることは多いと思います。スタンプロードの事業を拡げ、沖縄の雇用にも貢献してゆきたいと思います。

前田:オリジナルテンプレート作成、カラーシミュレーションソフトのアイデア等々も含め、大変有意義なお話を聞かせていただき、誠にありがとうございました。御社のスタンプロード事業の成功をお祈りいたします。

屋富祖社長:ありがとうございました。

左から弊社代表佐藤、屋富祖社長、弊社岡山営業所長南
(左から弊社代表佐藤、屋富祖社長、弊社岡山営業所長南)
2022.06.24